余談-マウソックの大きな声で独り言 第3回

「食欲の春夏秋冬」をお読みいただき誠にありがとうございます。
―マウスには、豊かな「マウスの表情」がある―そもそもマウスの表情とはどのような表情なのか、マウソックの幻覚??疑いが尽きないですが、まずは、マウスの表情についての研究を簡単にご紹介したいと思います。

マウスしかめっ面スケール
痛みのレベルを表情から評価する研究があります。
 Coding of facial expressions of pain in the laboratory mouse
 Nature Methods volume 7, pages447–449(2010)

人間にとってなかなか、マウス語の理解は難しいため、マウスの目の開き具合、耳の立ち上がり、ひげの張り具合など、痛みによってそれらがどのように変化するかを数値で表します。このスケール(評価基準)を「マウスしかめっ面スケール」として、論文発表されました。このような研究が人へ応用されると、例えば、投薬でどの程度の痛みが現れるのか、また、鎮痛はどれほどのものなのか、術後の痛みやその痛みが治まった状況を目視判断できるようになります。(詳細は、後程のマウソックの大きな声で独り言でご紹介します。ご期待ください。)

マウソックの考察
ただ、このような痛みスケールは、置かれた環境によって個体差が大きく出るのではないかと個人的におもっています。そのため、マウスの表情をお話しする前に、環境の違いから現れるマウスの行動についてお話します。

マウスは、食物連鎖の下層にいることから、身を守るために、情動伝染が非常に大事なのではないかと想像しました。

情動伝染:ある個体が情動表出した場合、それを見ていた他の個体も似たような状態を生みだすこと。

情動伝染は、集団生活と相関があるのではないかと思っています。

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そして、集団生活が長いマウスほど情動伝染が起きやすく、情動伝染の影響が強いほど模倣行動は思った以上に簡単に行えるのではないかと想像しています。

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つまり、「集団生活」「情動伝染」「模倣行動」は単独で動いておらず、集団生活と模倣行動は、情動伝染を介して、繋がっているのではないか―それに該当すると思われる行動が、ペットのマウスに現れた出来事がありました。

マウスの模倣―マウスが手を振る―
■ににちゃん(マウス メス)の場合
ある日、何気なく、ににちゃんに話しかけました。
おやつをあげ、「ににちゃん」と名前を呼びながら、飼い主が手を振った時、ににちゃんは、おもむろに片手をケージの側面につけて、もう片方の手(本来、前足ですが、ここでは、便宜的に「手」と表現します。)をバタバタ上下に激しく動かしました。飼い主が手を振ることをやめると、ににちゃんも手を振ることをやめました。またすぐに「ににちゃん」と声をかけ、手を振ると、また、手をバタバタと動かし始めました。
つまり、私が手を振ると同様に手をバタバタと動かすことが、数回により確認されました。わたしが手を振っている間は、ずっと手をバタバタと動かしていました。この一連の行動は、長期間続きましたが、皮膚病を患ってからは、手を振ることがなくなりました。

■ぽぽくん(マウス オス)の場合
「ぽぽくん」と名前を呼びながら、手を振ってみました。
ぽぽくんも、ににちゃんと同様に手を振りましたが、ににちゃんより、手を振っている時間は短く、飼い主が手を振っていても、止めてしまいました。またすぐに声をかけて手を振ると、振り返してくれましたが、次第に、名前を呼んで手を振っても振り返さなくなりました。

■ジュニア君(マウス オス)の場合
「ジュニア君」と名前を呼びながら、手を振ってみました。
ジュニア君は、チラ見して、すぐに違う方向を向いてしまいました。飼い主の側から離れたりすることはありませんでしたが、手は、動かしませんでした。
名前を呼んでから手を振ることを数か月毎日継続して行った結果、次第にこちらをじっと見るようになりましたが、現状、手を振り返すような行動は確認されていません。

この3匹には、ある違いがあります。性別は、対象外として、ににちゃん、ぽぽくん、ジュニア君の順にそれぞれの鼠生における集団生活した時間の割合が小さくなることです。
◎ににちゃんは、2年4か月で亡くなりました。集団生活を送った期間は、8週齢で離乳してから1年8か月です。
20か月/28か月⇒71.4% つまり、鼠生の7割の時間を集団生活、3割の時間を単独生活しました。

◎ぽぽくんは、3年6か月で亡くなりました。集団生活を送った期間は8週齢で離乳してから2年です。
24か月/42か月⇒57.1% つまり、鼠生の6割弱の時間を集団生活、4割強割の時間を単独生活しました。

◎ジュニア君は、離乳してから集団生活をおくったことがありません。
つまり、鼠生のすべての時間が単独生活です。

今、私の手元で生きているマウスは、ジュニアくんだけになりました。
結膜炎症状も徐々に良くなり、毎日静かに暮らしています。
かの2匹が手を振りながら私に伝えたかったこととは、なんだったのだろう、あの日、真剣に手をバタバタと振りつづけた可愛いマウス達をおもいだしながら、次回、論文を交えて、マウスの模倣のお話しの続きを記したいと思います。

 

【あとがき】
「余談-マウソックの大きな声で独り言 第3回」をお読みいただきありがとうございます。「余談-マウソックの大きな声で独り言」では、論文やペットのマウス達から観察されたことに基づいてマウソック個人の思ったことを記載しております。学術根拠として使用できるものではありませんので、ご理解をいただけますと幸いに存じます。今後とも「余談-マウソックの大きな声で独り言」をどうぞよろしくお願い致します。