チビくんより天国から連絡ス

2020年7月7日、チビくんは、その小さな命を閉じました。
あんなに元気だったのに。
チビ君は、黒毛のマウスでした。一番小さくて、一番元気だったのに。

亡くなる数日前から動きが少なくなって、時々、体温が低いこともありました。でも、おやつをあげるとどんな時も元気いっぱい走り寄って来てくれました。

大丈夫、大丈夫。
言い聞かせるように、1日が過ぎ、2日、3日・・・・元気になってくれる。
でも、それが命を縮めてしまったのだと、亡くなったその日、主のいなくなったお部屋をマウソックはただ見ていました。

 

その日は七夕。

朝、全く動かないチビ君。

まさか、体温が生命維持限界を下回ってる?!
チビ君を温めようと、いそいでカイロの準備。

えっ・・・
準備をしている間に何が起きたのかわからない。強いて5分くらい。
再びチビ君を見たときは、ごく弱いけれど、呼吸の乱れのような痙攣のような動きがみられた。

痙攣ならば、すぐに止めなければならない。とても慌てていた。
無造作にチビ君のお部屋の中へ手を入れてしまい、突然入ってきた手にチビ君はとても驚いてしまった。

あっ、
遅かった。あまりの驚き様、飛び跳ねるようにお部屋の隅に逃げたチビ君。
しまった、これはショックを招いてしまう。
ものすごい焦りを体中、末端まで駆け巡りながら、なんとか静かにチビ君の体を持ち上げた。

体温低下。
マウソックの手の中に入っても、チビ君の驚きは止まらず、呼吸が荒くなってしまった。
細かな痙攣は、やはり手へ振動として伝わってくる。

どう止めたらいいんだ。
どうしたらいいんだ。

かかりつけの動物病院へ電話する。

アドバイスは届かない。
そこでもらったアドバイスとおりにしたつもりだ。
でも、そのアドバイスは、チビ君に届かなかった。

心臓が細動を起こした。
心臓の動きを、正常に戻れ、チビ君、チビ君!
心臓マッサージは、肋骨を折ってでもするべきなのか、わからない。

自分の判断が、本当にどうしていいのかわからない、でも早くしないと、
なんで、ドクターのいうとおりにしたけど、どうして、でも、でも、自分ができることはいったいなんなんだ・・いったい自分はなにができるんだ・・

 

細動はしだいに弱くなりました。そして、細動はすっと消えました。
心停止したことがはっきりとわかりました。

 

もしかすると電気ショックとかがあって、与えれば、瞬間、生き返ったのかもしれません。
わかりません。
でも、心停止がはっきりと分かったその瞬間、マウソックの左手の中で
がんばっていた力が抜けたかのように、チビくんの体が横たわっていました。

少しだけ残るぬくもりを手に持ったまま、呆然とするマウソック。

目が開いていました。マウソックは機械的に自分の右手をチビ君の顔にかざしチビ君の目を閉じてあげました。
チビ君は、目を閉じました。にっこりとしてまるで笑顔のようでした。
これが、飼い主ができた唯一のことになりました。

目を閉じたチビ君を見たマウソックは、ただ、ただチビ君をなでました。
ごめんね。と、一言もいえないまま、涙がぼたぼたと溢れました。

ようやく自分が何もできない、なにも知らないアホであることを知った愚かすぎる飼い主は、ただひたすら天国を目指し、歩き出したチビ君のために、沢山のおやつとご飯をお棺に入れて、そして、写経をしました。

 

道中何事もなく、天国へついてほしい。ひたすらそればかりを願って。

 

天国から連絡ス。
それから2〜3日たちました。

朝、おやつのとうもろこしをににちゃんへあげていたとき・・

ににちゃんは、とてもおいしそうにトウモロコシを食べています。
ににちゃん、おいしい?

なんとなく隣にある亡きチビ君のお部屋が気になりました。

ふと、そのとき。
小さな黒い影がマウソックの視界の際に入りました。

本当に一瞬、ににちゃんを眺めるようにふっとたちあがったと思ったら、 その小さな影は、すっとマウソックの手前くらいで、瞬間、消えてしまいました。

 

マウソックが、もう一度見たとき、チビくんのいない静かなお部屋がひろがっていました。

 


・・・亡き鼠、おやつがもっとほしいと天国から連絡す・・・