マウスの内緒話ーぼくは、怒っているー

熱日を浴び続けた建物は、夜になっても冷めなかった。
そして、人間の叡知のひとつ熱交換機の限界に迫ってくる。
2017年、夏の夜。


今日も暑かった・・・全然涼しくならない・・
マウスくん達、大丈夫ですか?
このころは、一時的に5匹の雄マウスが、1つのお部屋で同居していました。
5匹とも保冷剤で冷えているお部屋の壁にぺったり張り付いています。

以前、このお部屋のそばに氷を置いてみたのですが、冷えすぎてしまったため、今度は保冷剤にしてみたら、あまり冷えない、すぐに溶けてしまうで、調節難・・

常時毛皮着用のマウスくんたち・・暑いよね・・
クーラーで適温になっていますが、でも、やっぱりなんだかんだ暑さに包まれてしまう。
もう、ぐったり・・

 

翌日・・
朝早くから太陽が元気に空をのぼります。
今日も暑いです!と青い空が伝えてくる午前7時。

寝られなかったな・・しんどいな・・・
夏空を見上げて、太陽かがやきすぎ、とか、夏は1週間くらいになるよう
もっと地球が調節せぇとか、夏だけロックダウンで経済活動量を落とさない方法を考なあかん、・・・ぶつぶつ。ぶつぶつ。

でも、地球の自転と公転に文句を言うレベルの人間が、もし、経済活動量を落とさない方法を持っていたら、それは、もうパンドラの箱

・・・・。
マウソック、文句を垂れ流したら少し落ち着いたのか、室内の空気を循環させてみようと素直にイトーヨーカドーでサーキュレーターを購入しました。
お昼頃、汗だくで帰宅。

サーキュレーター登場!
サーキュレーターは、白くてマッシュルームみたいな形。
スイッチON。ぶおーと頑張る音と冷風が出てきました。

おおぉぅ・・・・・
暑い日差しの中、頑張って運んできたかいがありました。
「弱」冷風ですが、部屋の中の空気を動かして、暑さをどけてくれている気がします。

多分、いいね!

マウソックは、マウスくん達にも涼しさがしっかり届くよう、マウスくん達のお部屋と同じ高さの植木鉢の台にサーキュレーターを置きました。
部屋の涼んだ空気をよろこびながら、いつの間にか眠ってしまいました。

事態は、起きていた。レベル:最悪。
午後6時。
マウソックが起きたときに見た光景・・・

サーキュレーターが「強」になっていて、マウスくん達に激突。
丸くなってみんなで、目をつむって必死に耐えています。
マウスくん達のお部屋に敷いている紙製の床敷もそちらこちらに吹き飛ばされてしまい、おしっこが床敷に吸収されず、体がところどころべたべた。

!!なんで?
あわてて、スイッチOFF。

みんな、がたがた震えていました。
震えが止まらず足取りもおぼつきません。

おそらくですが、マウソックが寝返りしたときに誤ってサーキュレーターのリモコンを押してしまったのだと思います。そのため、マウスくん達に強冷風が激突する位置でサーキュレーターの首振りが偶然停止。
その時間、およそ5時間。

なんてことを・・ごめん、ごめんね。

マウソック、散らかったお部屋をきれいにしてから、一時的に毛布を掛けました。
しばらくするともわもわ、暑さがまた漂い始めた。
マウソックは、毛布を取るとおもむろにお部屋の扉を開けて、一匹のマウスくんを手に取り体温を確認。
良かった、大丈夫だ・・・

マウスには逆鱗がある
マウソックは安心して、マウスくんをお部屋に戻しました。
すると、みんながお部屋に戻ったマウスくんへわらわら寄ってきました。
マウスくんのお顔をのぞき込んだり、体を少しばかりくっつけたり、
かおを寄せて、ひそひそ・・ひそひそ・・ひそひそ・・
どのマウスくんもマウソックに背を向けて、なんだろう・・マウスの内緒話・・?

そのとき、
1匹のマウスくんが、マウソックと向き合いました。そして、後ろ足だけですっと、立ち上がりました。
その姿、毅然。
体勢を戻すと、一呼吸。

そして、規則正しく力強く、しっぽを左右に動かし始めた。



しっぽは、床敷とこすれて、シャ、シャ、と音を鳴らしています。
例えてマムシの威嚇音に似ている。

え!え!
思わず見入るマウソック。

耳はぴんと立ち上がり、細く三角につりあがる眼。
シャ、シャ、鳴り続ける音。

泰然たるマウスくんから、ぎろり、眼光が一気に放たれた。
人間マウソックは、マムシマウスの視線から逃れられず、瞬殺、完全に喰われてしまいました。


時間が過ぎていく。
太陽は沈みかけて、夜を迎えようとしています。

静かに眠るマウス達。
昼の残暑がある部屋の中からマウソックは、暗闇に沈んでいく窓の外を見ていました。

ごめんね、こわかったね。もう、しないよ。