余談-マウソックの大きな声で独り言 第2回

すぐに第2回を迎えた「余談ーマウソックの大きな声で独り言」
マウソックの主観をさらに推し進めて記載していきます。
どうぞよろしくお願い致します。

ペットの病気と病態予測について記載する前に、まず、病気は多岐にわたり、ペットが病気になったときは、獣医さんと相談され、信頼関係のもとで治療を進めていかれることが最も重要だと思います。

また、現状、病態予測がどの程度学術的に可能であるのかといえば、行動学から様々なことが判明しつつも、今後さらに発展していくべき分野として日々研究が推進されている状況であると思っています。研究の累積から、行動と疾患が紐付けられ、さまざまな病態の的確な予測がAIとともに可能となる、そんな日がくることも想像したりします。

今回、行動学の研究を根拠としてマウスの病態判断を進めました。ペットのマウスが示した行動から「鬱」と判断に至るまでの過程を、「行動」に限定して記載していきます。

大前提として簡単な尿検査と、糞便から回虫がいないこと、異臭がないことなどを確認しました。そして、病院までの移動の負荷を最小限するため、ぽぽくんが少し体力をつけた頃を見計らって動物病院を受診しました。そこでエコー検査をしていただき、疾患の傾向がないことを確認後、以下のように行動観察を続けました。

社会的順位の推測
4匹のマウスは、集団生活をする中で、1位ととくん(故)、2位ここくん、3位ももくん(故)、4位ぽぽくんの順で社会的順位を獲得したと各個体の脱毛状況から推測しました。

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もし、1位が2位を、2位が3位を、3位が4位をというように、攻撃するマウスと攻撃されるマウスが1匹 対1匹の場合、脱毛は1位に見られず、2位~4位までおおよそ均等に脱毛があるのではないかと考えました。
実際は、やはり1位のマウスに脱毛は見らなかったものの、2位~4位と順位が下がるに従い脱毛の範囲が広がっていたこと、また、ぽぽくんが攻撃行動を他の3匹から受けても反撃行動をしなかったことから、上記の順位を推測しました。

マウスの行動
鬱様行動がみられるときは、マウスの自発活動性が失われていることになります。
下記3点を、簡易的ですが行動計測の環境として見立て、マウスの行動を観察しました。
1)
普段飼育しているケージより広い場所を自由に歩かせ、規定時間内の総歩行距離を同居中と同居解除後で比較したところ、同居解除後のほうがはるかに長い距離を歩行していました。また、同居解除後1か月が経過したころにまた同様に歩かせたところ、慣れてしまった可能性もありますが、散歩できる範囲全体を歩行したことを確認しました。

2)
同居解除直後、新しいケージに入れたときの反応として、どのくらいの時間をかけて探索行動をおこなうか測りましたが、すぐに隅のほうへ移動してしまい、測定不可でした。現在は、床敷を新しくするとケージの隅々まで必ず探索行動をすることが確認できています。

3)
同居解除直後、マウスを手のひらに乗せ、床から腰の位置くらいの高さを保ちながら、危険評価行動を観察しました。危険評価行動とは、のぞき込み行動で、規定時間内である高さから床をのぞき込んだ回数を数えます。同居解除直後のぽぽくんは、ほぼ危険評価行動をしませんでした。本来ならば被捕食側である小動物のマウスは危険評価行動をするはずですが、この時期のぽぽくんは、自発活動性が失われていたため、ほぼ危険評価行動をしなかったと推測されます。同居解除後1か月が経過したころには、規定時間内で危険評価行動を何回もするようになりました。

腸内を考える
腸内細菌叢のバランスが崩れていることを推測し、ヨーグルトなど食事による整腸を試みました。
<参考資料>
腸サイエンスの時代 うつ病の人の腸内細菌を調べたら… 調査から見えること
朝日新聞 Reライフ.net より

マウソックの深い悲しみ
4匹が同居していた時、ぽぽくんは、3匹から攻撃を受け、その攻撃は止まらない状況でした。

なぜ、このようなことになってしまったのか、社会的順位がそうさせていることは確かですが、執拗さは社会的順位だけで説明できるものなのか疑問に思い、検索をしたところ、興味深い2件の研究がありました。

静岡県立大学と他施設の共同研究は、社会的順位が性格や脳内の遺伝子発現に大きく影響することを明らかにしています。また筑波大学の研究プレゼン「攻撃行動の脳科学」の内容において、攻撃行動事態がマウスのセロトニン分泌に大きく関与しており、多すぎても少なすぎてもよくなく、適切な分泌量が脳内に必要であるとしています。

マウソックはこの2つの研究内容から、過剰な攻撃行動になるのは、攻撃行動を重ねることで脳内のセロトニン量が次第に変化し、さらなる攻撃行動が生まれ、結果、攻撃行動が目的のようになってしまったのではないのかと想像しました。

そのようになってしまったのはなぜなのか、やはり、マウス達は攻撃以外になにも見つけることができなかったということだと思います。できなかったというより、できる状況に4匹がいなかった、が正解だと思います。実際、ケージの中は、おもちゃはなく、4匹が一つの狭い部屋に同居している状況でした。

もし、もっと広々とした場所におもちゃが沢山ある環境でいつも楽しく遊べていたのなら、攻撃行動がおきたとしてもまた違う形の、これほど執拗な攻撃行動にならなかった可能性もあるのではないか。

ぽぽくんへの攻撃行動が確認された後、4匹は、それぞれ1匹ずつ生活するようにしました。この頃から、ととくんの活動量が減りました。その後、皮膚病を発症し、高価な薬をつけても悪化の一途をたどり、2020年1月4日、ととくんは苦しんで亡くなりました。ももくんは、体調があまり良くなくても元気なふりをしていました。体力が次第に尽きていくように悪化。そして、2019年9月11日、時無。体温は確実に限界を下回り、褪せるように消えていこうとするももくんの命を、マウソックは必死で守ろうとしていました。もう意味のない注射と遅すぎた加温で。

ぽぽくんを救うことができても、ととくん、ももくんを亡くしてしまった今、2匹の死は、飼っている者としての責任を大きく問いかけている、そう思えてならないのです。