ににちゃんの価値観

 

昼に降る雨の音。風の声。
静かな夜の虫の声。

そして時間は進む。
真夜中に沈んだ世界の音。
彼方から高速道路を走り渡る、尚早な音達。
朝までに、先を急いで夜を走る自動車の音が絶え間なくきこえる。
それ以外の音は聞こえてこない深夜3時。

またしばらくの時間がたった。
聞こえてきたのは、午前5時、朝を知らせる鳥の声。

朝になったんだ・・・
徹夜で仕事をしていたマウソックは、今、自分がなにかに引きこまれていくような感覚を覚えつつありました。
寝たい・・でも、起きていないと起きられなくなるな・・・
まだやらんとならんことがいろりろ・・・・・
睡魔の誘いはときにおだやか、時に強烈。
断れない。崩れるように誘いにのって、睡りの世界へ爆落。


気が付いた時はもう昼でした。
一度寝てしまうと、もっと寝ていようぜと体内でなにかが騒ぎ続けるのがマウソックという有機体です。
起きる起きないの攻めと守りを繰り返し、寝る前よりよっぽど疲れてから
起きることになりました。


ごめんね、遅くなりました。マウスちゃん達は元気かな?
いつもと大分違う時間に挨拶にきたマウソックにマウス達は困惑気味。

みんな、マウソックを見てもなかなか動く気配がなく、声のする方向をボーと見ているばかりで腰が重い。声をかけ続けたら仕方なくという雰囲気を漂わせ、マウソックの近くまでのそのそ寄ってきてくれました。

ににちゃん、どうしたの?
どんなに声をかけても、ににちゃんだけ寄ってきてくれません。
マウソックは、ににちゃんを見ます。
ににちゃんは、お部屋にある陶器の器を見ています。


その陶器の器には、ににちゃんの飲み水がはいっています。
ににちゃんは、その水面をじっと見ていました。

ににちゃんは、普段お水に興味を持ちません。
お水が飲みたいときだけ陶器の器に近寄るぐらいです。

水面をじっとみているマウス。そのマウスをじっとみている人間。
水面ーマウスー人間と奇妙な一直線が引かれました。

そのうち、ににちゃんが、水面に手をかざしてひらひらと動かし始めた。
しかも前のめりになって大変なご興味の持ちようです。

?なんで?これは眠いどころでなくなったマウソック。

すると、ちょんちょん飛ぶようにマウソックに寄ってきました。
くりくりつやつやした目でマウソックを見ています。

どうしたの?

するとまたちょんちょん飛ぶように飲み水に向かいました。そして、水面をみると、またなぜか、ちょんちょん飛ぶようにマウソックの方へ来ます。

え?なにかな?おやつ?
でもまたちょんちょん飛ぶように飲み水に向かいました。

え?飲み水?
そろそろとお部屋の中に手を伸ばし、その陶器の器をゆっくりと持ち上げました。
マウソックの手のそばには、ぴったりとににちゃんがくっついています。
飲み水のはいった陶器をお部屋からだして、その水面をのぞいてみると・・・・

げ。

ちいさな虫が一匹、水面で暴れていました。
ににちゃんは、今まで虫をみたことがありません。
そうだよね、見たことがないもん、これはコワいよね。嫌だよね。

きれいなお水
お水を新しくしてお部屋に入れると、すぐに、ちょんちょん飛ぶように陶器の器に寄って水面をのぞき込みました。

お水、きれいにしたよ。
マウソック、にっこり。

ににちゃん、にっこにこのマウソックをみて、急激になにか気持ちが変わってしまったのか、のそのそとおへやの隅にある小さな巣に入ってしまいました。


・・・
よかれとおもって水交換、価値観が違いすぎると鼠に物申される・・・