ににちゃんの価値観

 

昼に降る雨の音。風の声。
静かな夜の虫の声。

そして時間は進む。
真夜中に沈んだ世界の音。
彼方から高速道路を走り渡る、尚早な音達。
朝までに、先を急いで夜を走る自動車の音が絶え間なくきこえる。
それ以外の音は聞こえてこない深夜3時。

またしばらくの時間がたった。
聞こえてきたのは、午前5時、朝を知らせる鳥の声。

朝になったんだ・・・
徹夜で仕事をしていたマウソックは、今、自分がなにかに引きこまれていくような感覚を覚えつつありました。
寝たい・・でも、起きていないと起きられなくなるな・・・
まだやらんとならんことがいろりろ・・・・・
睡魔の誘いはときにおだやか、時に強烈。
断れない。崩れるように誘いにのって、睡りの世界へ爆落。


気が付いた時はもう昼でした。
一度寝てしまうと、もっと寝ていようぜと体内でなにかが騒ぎ続けるのがマウソックという有機体です。
起きる起きないの攻めと守りを繰り返し、寝る前よりよっぽど疲れてから
起きることになりました。


ごめんね、遅くなりました。マウスちゃん達は元気かな?
いつもと大分違う時間に挨拶にきたマウソックにマウス達は困惑気味。

みんな、マウソックを見てもなかなか動く気配がなく、声のする方向をボーと見ているばかりで腰が重い。声をかけ続けたら仕方なくという雰囲気を漂わせ、マウソックの近くまでのそのそ寄ってきてくれました。

ににちゃん、どうしたの?
どんなに声をかけても、ににちゃんだけ寄ってきてくれません。
マウソックは、ににちゃんを見ます。
ににちゃんは、お部屋にある陶器の器を見ています。


その陶器の器には、ににちゃんの飲み水がはいっています。
ににちゃんは、その水面をじっと見ていました。

ににちゃんは、普段お水に興味を持ちません。
お水が飲みたいときだけ陶器の器に近寄るぐらいです。

水面をじっとみているマウス。そのマウスをじっとみている人間。
水面ーマウスー人間と奇妙な一直線が引かれました。

そのうち、ににちゃんが、水面に手をかざしてひらひらと動かし始めた。
しかも前のめりになって大変なご興味の持ちようです。

?なんで?これは眠いどころでなくなったマウソック。

すると、ちょんちょん飛ぶようにマウソックに寄ってきました。
くりくりつやつやした目でマウソックを見ています。

どうしたの?

するとまたちょんちょん飛ぶように飲み水に向かいました。そして、水面をみると、またなぜか、ちょんちょん飛ぶようにマウソックの方へ来ます。

え?なにかな?おやつ?
でもまたちょんちょん飛ぶように飲み水に向かいました。

え?飲み水?
そろそろとお部屋の中に手を伸ばし、その陶器の器をゆっくりと持ち上げました。
マウソックの手のそばには、ぴったりとににちゃんがくっついています。
飲み水のはいった陶器をお部屋からだして、その水面をのぞいてみると・・・・

げ。

ちいさな虫が一匹、水面で暴れていました。
ににちゃんは、今まで虫をみたことがありません。
そうだよね、見たことがないもん、これはコワいよね。嫌だよね。

きれいなお水
お水を新しくしてお部屋に入れると、すぐに、ちょんちょん飛ぶように陶器の器に寄って水面をのぞき込みました。

お水、きれいにしたよ。
マウソック、にっこり。

ににちゃん、にっこにこのマウソックをみて、急激になにか気持ちが変わってしまったのか、のそのそとおへやの隅にある小さな巣に入ってしまいました。


・・・
よかれとおもって水交換、価値観が違いすぎると鼠に物申される・・・

ぽぽくんからの注意

 

秋深し、木の葉が風とおどり始める2019年11月上旬。

日曜朝8時頃。

 

 

マウス達と同居するようになってから、起きたことがない時間に起きるようになった マウソック。

布団から這い出てくると、カーテンを開けます。

そして、窓を思いっきり開けると冷たい空気が朝の光とともに部屋へ浸透してきました。

 

おはよう!おはようございます!!おはよう!おはようございます!!!

 

職場でもこんなに何回も大音量で言ったことがありません。

でも、この言葉、大声で言うと目が覚めて、結構すっきりします。

 

朝に弱く、起きるとフラフラして、毎朝どこかにぶつかりながら歩いていたマウソックは、マウス達のおかげで少しずつ朝に強くなりました。

 

みんな、元気ですか?

はい、コンドロイチンタブレットです。これで、足腰の心配を減らしましょう!

 

1匹、1匹に直接手渡します。

元気よく受け取ってくれました。

 

 

ぽぽくんからの注意

最後の1匹、ぽぽくん。

おはよう!コンドロイチンタブレットだよ!

 

待ちきれず、前足をお部屋の壁に付けて後ろ足だけで立ち上がり、ぼんぼんジャンプ。

ぽぽくんは、お太り様なので、跳ねるたびに、丸い重そうなお腹がぼむぼむ揺れています。

 

えー、大丈夫?

マウソックは、にゅっとぽぽくんに、顔を寄せました。

マウソックとぽぽくんの距離、およそ20cmくらい。

 

大丈夫そうだね。

見た目大丈夫そうでも安心できないのが小動物ですが、でも、いつもと全く同じ動きなのでよし!

 

おはぁ〜ようございます!!

そのとき、ぽぽくんがふらぁっと後ろへ倒れそうになった。

 

!!

と、思ったら、もとどおり。壁に手をつけて、後ろ足だけで立ち上がっています。

が、固まったまま。

 

?!

ぽぽくん、しばらく固まったままマウソックをまっすぐ見ていました。

 

 

 ・・・鼠による人間の口臭チェック、歯を磨けと注意を受けるかな・・・

チビくんより天国から連絡ス

2020年7月7日、チビくんは、その小さな命を閉じました。
あんなに元気だったのに。
チビ君は、黒毛のマウスでした。一番小さくて、一番元気だったのに。

亡くなる数日前から動きが少なくなって、時々、体温が低いこともありました。でも、おやつをあげるとどんな時も元気いっぱい走り寄って来てくれました。

大丈夫、大丈夫。
言い聞かせるように、1日が過ぎ、2日、3日・・・・元気になってくれる。
でも、それが命を縮めてしまったのだと、亡くなったその日、主のいなくなったお部屋をマウソックはただ見ていました。

 

その日は七夕。

朝、全く動かないチビ君。

まさか、体温が生命維持限界を下回ってる?!
チビ君を温めようと、いそいでカイロの準備。

えっ・・・
準備をしている間に何が起きたのかわからない。強いて5分くらい。
再びチビ君を見たときは、ごく弱いけれど、呼吸の乱れのような痙攣のような動きがみられた。

痙攣ならば、すぐに止めなければならない。とても慌てていた。
無造作にチビ君のお部屋の中へ手を入れてしまい、突然入ってきた手にチビ君はとても驚いてしまった。

あっ、
遅かった。あまりの驚き様、飛び跳ねるようにお部屋の隅に逃げたチビ君。
しまった、これはショックを招いてしまう。
ものすごい焦りを体中、末端まで駆け巡りながら、なんとか静かにチビ君の体を持ち上げた。

体温低下。
マウソックの手の中に入っても、チビ君の驚きは止まらず、呼吸が荒くなってしまった。
細かな痙攣は、やはり手へ振動として伝わってくる。

どう止めたらいいんだ。
どうしたらいいんだ。

かかりつけの動物病院へ電話する。

アドバイスは届かない。
そこでもらったアドバイスとおりにしたつもりだ。
でも、そのアドバイスは、チビ君に届かなかった。

心臓が細動を起こした。
心臓の動きを、正常に戻れ、チビ君、チビ君!
心臓マッサージは、肋骨を折ってでもするべきなのか、わからない。

自分の判断が、本当にどうしていいのかわからない、でも早くしないと、
なんで、ドクターのいうとおりにしたけど、どうして、でも、でも、自分ができることはいったいなんなんだ・・いったい自分はなにができるんだ・・

 

細動はしだいに弱くなりました。そして、細動はすっと消えました。
心停止したことがはっきりとわかりました。

 

もしかすると電気ショックとかがあって、与えれば、瞬間、生き返ったのかもしれません。
わかりません。
でも、心停止がはっきりと分かったその瞬間、マウソックの左手の中で
がんばっていた力が抜けたかのように、チビくんの体が横たわっていました。

少しだけ残るぬくもりを手に持ったまま、呆然とするマウソック。

目が開いていました。マウソックは機械的に自分の右手をチビ君の顔にかざしチビ君の目を閉じてあげました。
チビ君は、目を閉じました。にっこりとしてまるで笑顔のようでした。
これが、飼い主ができた唯一のことになりました。

目を閉じたチビ君を見たマウソックは、ただ、ただチビ君をなでました。
ごめんね。と、一言もいえないまま、涙がぼたぼたと溢れました。

ようやく自分が何もできない、なにも知らないアホであることを知った愚かすぎる飼い主は、ただひたすら天国を目指し、歩き出したチビ君のために、沢山のおやつとご飯をお棺に入れて、そして、写経をしました。

 

道中何事もなく、天国へついてほしい。ひたすらそればかりを願って。

 

天国から連絡ス。
それから2〜3日たちました。

朝、おやつのとうもろこしをににちゃんへあげていたとき・・

ににちゃんは、とてもおいしそうにトウモロコシを食べています。
ににちゃん、おいしい?

なんとなく隣にある亡きチビ君のお部屋が気になりました。

ふと、そのとき。
小さな黒い影がマウソックの視界の際に入りました。

本当に一瞬、ににちゃんを眺めるようにふっとたちあがったと思ったら、 その小さな影は、すっとマウソックの手前くらいで、瞬間、消えてしまいました。

 

マウソックが、もう一度見たとき、チビくんのいない静かなお部屋がひろがっていました。

 


・・・亡き鼠、おやつがもっとほしいと天国から連絡す・・・

ショパン「告別」をここくんに

ここくんは、2020年7月7日、3年1か月の命を閉じました。

 

あのとき・・夜も暑い夏のはじまり
マウソックは、2年前の暑い夏の夜、タクシーに乗ってコンクリートジャングルの中を流れる東京の一般道を走っていました。
夜景が華やかに流れていく外を眺めながら、静かな車内で
膝の上においた丸い荷物をひたすらに撫でていました。

膝の上には、紙袋に入ったここくんたちがいました。
かさかさと動く音

きっとしあわせになる。うちにくれば。
美しい夜の街路を走り抜けながら、純粋に、マウソックはマウソックを信じきっていました。


信じすぎた先にしあわせはなかった
マウソックがあれほど願ったしあわせは、かないませんでした。

ここくんは、亡くなる前の1週間、とても苦しそうでした。
体温も低下し、温めていても、ほぼ動きませんでした。
ときどき震えをみせながらやっと歩いていました。
そして、七夕の朝、チビ君が亡くなったあとを追いかけるように
マウソックから旅たちました。

頑張った体は、やせていました。そして、下胸のあたり(胃の付近)から
不自然に骨が突き出ていたのを確認しました。

マウソックにどんな力もありませんでした。頑張ったここくんを手にとり、そっと撫でました。何度も何度も、ただ、撫でていました。

しあわせとはなんなのだろう。我が家に来たらしあわせ、と、連れてきたあの日から2年。そして、これが、辿り着いたしあわせということだったのか、固く目を閉じたここくんを見つめていた、そのとき、すっとひとすじの思考が脳の奥で走った。わたしがしてあげられるしあわせは、ない。しあわせは、思った以上に遠くはるか彼方できらきらしている。その強い輝きは、自分の近くで輝いていると勘違いするくらい輝くものなのだと。

bon voyage
翌日、斎場に行く途中、一度締めたお棺の蓋を開けました。
偶然に上がった雨上がりの空の下で、
眠るここくんに降る、さわやかな風、優しい光

天国はどんなところか、わかりません。
でも、我が家に来ればしあわせになると思い込んでいたマウソックから
本当の幸せな場所へ向かっていったのだと
今度こそしあわせになってほしい

マウソックは、静かにつぶやきました。
「ありがとう、天国に必ずいくんだよ。よい旅を、ね。」
そして、そっとお棺の蓋を閉めました。


ショパン「告別」
亡くなって2週間が過ぎた頃、小さな骨壺のある場所に飾っていたトルコキキョウとカスミソウが役割を終えていくかのように枯れ始めました。

天国にきっと着いたんだね。


・・・かなわなかった亡き鼠のしあわせを願ひ、ショパン「告別」を聴く・・・

マウスの内緒話ーぼくは、怒っているー

熱日を浴び続けた建物は、夜になっても冷めなかった。
そして、人間の叡知のひとつ熱交換機の限界に迫ってくる。
2017年、夏の夜。


今日も暑かった・・・全然涼しくならない・・
マウスくん達、大丈夫ですか?
このころは、一時的に5匹の雄マウスが、1つのお部屋で同居していました。
5匹とも保冷剤で冷えているお部屋の壁にぺったり張り付いています。

以前、このお部屋のそばに氷を置いてみたのですが、冷えすぎてしまったため、今度は保冷剤にしてみたら、あまり冷えない、すぐに溶けてしまうで、調節難・・

常時毛皮着用のマウスくんたち・・暑いよね・・
クーラーで適温になっていますが、でも、やっぱりなんだかんだ暑さに包まれてしまう。
もう、ぐったり・・

 

翌日・・
朝早くから太陽が元気に空をのぼります。
今日も暑いです!と青い空が伝えてくる午前7時。

寝られなかったな・・しんどいな・・・
夏空を見上げて、太陽かがやきすぎ、とか、夏は1週間くらいになるよう
もっと地球が調節せぇとか、夏だけロックダウンで経済活動量を落とさない方法を考なあかん、・・・ぶつぶつ。ぶつぶつ。

でも、地球の自転と公転に文句を言うレベルの人間が、もし、経済活動量を落とさない方法を持っていたら、それは、もうパンドラの箱

・・・・。
マウソック、文句を垂れ流したら少し落ち着いたのか、室内の空気を循環させてみようと素直にイトーヨーカドーでサーキュレーターを購入しました。
お昼頃、汗だくで帰宅。

サーキュレーター登場!
サーキュレーターは、白くてマッシュルームみたいな形。
スイッチON。ぶおーと頑張る音と冷風が出てきました。

おおぉぅ・・・・・
暑い日差しの中、頑張って運んできたかいがありました。
「弱」冷風ですが、部屋の中の空気を動かして、暑さをどけてくれている気がします。

多分、いいね!

マウソックは、マウスくん達にも涼しさがしっかり届くよう、マウスくん達のお部屋と同じ高さの植木鉢の台にサーキュレーターを置きました。
部屋の涼んだ空気をよろこびながら、いつの間にか眠ってしまいました。

事態は、起きていた。レベル:最悪。
午後6時。
マウソックが起きたときに見た光景・・・

サーキュレーターが「強」になっていて、マウスくん達に激突。
丸くなってみんなで、目をつむって必死に耐えています。
マウスくん達のお部屋に敷いている紙製の床敷もそちらこちらに吹き飛ばされてしまい、おしっこが床敷に吸収されず、体がところどころべたべた。

!!なんで?
あわてて、スイッチOFF。

みんな、がたがた震えていました。
震えが止まらず足取りもおぼつきません。

おそらくですが、マウソックが寝返りしたときに誤ってサーキュレーターのリモコンを押してしまったのだと思います。そのため、マウスくん達に強冷風が激突する位置でサーキュレーターの首振りが偶然停止。
その時間、およそ5時間。

なんてことを・・ごめん、ごめんね。

マウソック、散らかったお部屋をきれいにしてから、一時的に毛布を掛けました。
しばらくするともわもわ、暑さがまた漂い始めた。
マウソックは、毛布を取るとおもむろにお部屋の扉を開けて、一匹のマウスくんを手に取り体温を確認。
良かった、大丈夫だ・・・

マウスには逆鱗がある
マウソックは安心して、マウスくんをお部屋に戻しました。
すると、みんながお部屋に戻ったマウスくんへわらわら寄ってきました。
マウスくんのお顔をのぞき込んだり、体を少しばかりくっつけたり、
かおを寄せて、ひそひそ・・ひそひそ・・ひそひそ・・
どのマウスくんもマウソックに背を向けて、なんだろう・・マウスの内緒話・・?

そのとき、
1匹のマウスくんが、マウソックと向き合いました。そして、後ろ足だけですっと、立ち上がりました。
その姿、毅然。
体勢を戻すと、一呼吸。

そして、規則正しく力強く、しっぽを左右に動かし始めた。



しっぽは、床敷とこすれて、シャ、シャ、と音を鳴らしています。
例えてマムシの威嚇音に似ている。

え!え!
思わず見入るマウソック。

耳はぴんと立ち上がり、細く三角につりあがる眼。
シャ、シャ、鳴り続ける音。

泰然たるマウスくんから、ぎろり、眼光が一気に放たれた。
人間マウソックは、マムシマウスの視線から逃れられず、瞬殺、完全に喰われてしまいました。


時間が過ぎていく。
太陽は沈みかけて、夜を迎えようとしています。

静かに眠るマウス達。
昼の残暑がある部屋の中からマウソックは、暗闇に沈んでいく窓の外を見ていました。

ごめんね、こわかったね。もう、しないよ。

マウスの恋愛事情 ーボク、フラれちゃったー

 

 2018年5月、若葉がきらきら風に揺れる頃。

そんな季節の中でおきた小さな恋のお話です。

マウソックは、とあるマウス達のお部屋の前に立ちました。
みんな、元気かな?今日からテラスハウスしてみよう。

お部屋の中にいるマウスたちに声をかけていきます。
選抜メンバー
・AちゃんとBちゃん(雌)2匹
・まうすくん(雄)1匹

テラスハウス(2018年5月マウス偏)
新しいお家に新しいメンバー。最初は、3匹ともびっくり。
お部屋の中をぐるぐる走り回ります。時々ごはんを気休めにたべてみたり
おへやの隅に行ってみたり。
気分が収まらないなーとひたすらお部屋の中を駆け回ります。

お部屋の壁に手をつけて、後ろ足で立ち上がり、背伸びしてきょろきょろ。
お部屋のについている金具に登って、金属製の網の天井を捕まりながらお腹を上に向けてそのまま伝え歩いてみたり。
スパイダーマンみたい。(SASUKEに出られるね。)
時々ご挨拶するようにお互いの鼻を突き合わせてくんくん臭いをかいだり。

そうこうしているうちに興奮が治まってきたのか
穏やかな空気がお部屋の中に満ちてきました。

しばらくすると女の子2匹が向かい合って一生懸命お食事を始めました。
おいしいね。
おいしいね。

マウスくんはどうした?
マウスくんは、マウスちゃん達から斜め後ろに10センチほどの距離を空けた位置でご飯を食べています、それなりに一生懸命に。そして時々マウスちゃん達をちらり。

しばらくして、マウスくんがそっと距離を縮めました。
マウスくんはやっぱりマウスちゃん達の斜め後ろにいますが、ちょっと縮まってAちゃんと6センチくらいの距離になりました。

恋が始まる
AちゃんとBちゃんのうち、Aちゃんとの距離は確実に縮まりました。でもBちゃんとの距離はあまり縮まっていません。
??
マウソックだったらどちらとも同じくらいの距離をとるけどなー・・・
にぶいマウソック。まだ考えています。

BちゃんじゃなくてAちゃんが好きなんだね。
にやにや。そのうちに、はっとします。

マウスに好みがあるということ?
小さな恋、実るといいなぁ・・・

恋の行方
マウスちゃん達は一心にごはんをたべています。
マウスくんも食べることに集中はしていませんが、食べています。そして食べながらまたそっと距離を縮めました。Aちゃんまであと4センチくらい。

おー、気遣いだね。すばらしい。ごはん中だもん、さすがです。
マウソックのじろじろ目線が止まらない。

そうこうしているうちに距離が2~3センチくらいになりました。
ここでようやくお食事女子Aちゃんがちらっとマウスくんを見ました。
でもすぐにごはん。ただ、ちょっと背を向けてしまったかな。

背を向けたのはマウスくんに向けたのか、じろじろ見ているマウソックに向けたのかはわかりませんが、ちょっとだけAちゃんの位置が変わりました。

うーん!ここは物音を立てず、慎重に見守りたい。
恋の距離を慎重にすすめるマウスくん。それに気が付きながら
知らんふりでお食事を続けるAちゃん。そして何かやらかしそうなマウソック。
妙な緊張のある空気が流れています。

距離ゼロ
ついに!2匹がぴったりと横にならびました。仲良くごはんを食べています。
しびれたなー、でもよかった。これでOK!

とおもったときでした、マウスくんが、ちらっとAちゃんを見て
そっとAちゃんの腰あたりに両手を軽く添えました。

お!!
その瞬間、
「きっ」Aちゃんが少し振り返り軽く鳴き声を上げました。
少し毛も逆立っています。
あれ、ちょっと怒ったね。。

あわててごはんを食べ始めるマウスくん。
また、二匹ともぴったりくっついてごはんを食べています。

・・・・。
マウソック、もうじっくり見ています。

また、マウスくんが、ちらり。始まりました、マウスの恋の駆け引き。
Aちゃんはごはんを真剣に食べています。
マウスくんがそっとAちゃんの腰あたりに両手を添え自分のほうにぎゅっとひっぱりました。


「ぎゃぎゃぎゃぎゃ」
Aちゃん、振り返りながらものすごい鳴き声をあげ、後足だけで立ち上がろうとしました。その怒りたるや、マウソックはびっくり。

マウスくん、びょーんと跳ねるように、お家の隅までとんで逃げました。
そしてうなだれた。
ボク、フラれちゃった・・・


マウスソックは、うなだれるマウスくんの前で申し訳ないと思いながら、笑笑 笑。
はっとした顔でマウソックを見上げたマウスくん。
そして、つーんとしながら悠々とマウソックの前を歩いてお部屋のまた別の隅に移動しました。

お部屋の隅で慰めるかのようにごはんを食べ始めたマウスくん。
マウソックは、そっと言いました。

・・・ごはん中は諦めよう。

しばらくして・・・
もうなにもなかったようにみんなごはんを食べています。
穏やかな空気また流れていました。

それから2週間後
赤ちゃんはマウスちゃん達から産まれませんでした。
そしてマウステラスハウスは解散しました。



余談-マウソックの大きな声で独り言 第2回

すぐに第2回を迎えた「余談ーマウソックの大きな声で独り言」
マウソックの主観をさらに推し進めて記載していきます。
どうぞよろしくお願い致します。

ペットの病気と病態予測について記載する前に、まず、病気は多岐にわたり、ペットが病気になったときは、獣医さんと相談され、信頼関係のもとで治療を進めていかれることが最も重要だと思います。

また、現状、病態予測がどの程度学術的に可能であるのかといえば、行動学から様々なことが判明しつつも、今後さらに発展していくべき分野として日々研究が推進されている状況であると思っています。研究の累積から、行動と疾患が紐付けられ、さまざまな病態の的確な予測がAIとともに可能となる、そんな日がくることも想像したりします。

今回、行動学の研究を根拠としてマウスの病態判断を進めました。ペットのマウスが示した行動から「鬱」と判断に至るまでの過程を、「行動」に限定して記載していきます。

大前提として簡単な尿検査と、糞便から回虫がいないこと、異臭がないことなどを確認しました。そして、病院までの移動の負荷を最小限するため、ぽぽくんが少し体力をつけた頃を見計らって動物病院を受診しました。そこでエコー検査をしていただき、疾患の傾向がないことを確認後、以下のように行動観察を続けました。

社会的順位の推測
4匹のマウスは、集団生活をする中で、1位ととくん(故)、2位ここくん、3位ももくん(故)、4位ぽぽくんの順で社会的順位を獲得したと各個体の脱毛状況から推測しました。

画像1

もし、1位が2位を、2位が3位を、3位が4位をというように、攻撃するマウスと攻撃されるマウスが1匹 対1匹の場合、脱毛は1位に見られず、2位~4位までおおよそ均等に脱毛があるのではないかと考えました。
実際は、やはり1位のマウスに脱毛は見らなかったものの、2位~4位と順位が下がるに従い脱毛の範囲が広がっていたこと、また、ぽぽくんが攻撃行動を他の3匹から受けても反撃行動をしなかったことから、上記の順位を推測しました。

マウスの行動
鬱様行動がみられるときは、マウスの自発活動性が失われていることになります。
下記3点を、簡易的ですが行動計測の環境として見立て、マウスの行動を観察しました。
1)
普段飼育しているケージより広い場所を自由に歩かせ、規定時間内の総歩行距離を同居中と同居解除後で比較したところ、同居解除後のほうがはるかに長い距離を歩行していました。また、同居解除後1か月が経過したころにまた同様に歩かせたところ、慣れてしまった可能性もありますが、散歩できる範囲全体を歩行したことを確認しました。

2)
同居解除直後、新しいケージに入れたときの反応として、どのくらいの時間をかけて探索行動をおこなうか測りましたが、すぐに隅のほうへ移動してしまい、測定不可でした。現在は、床敷を新しくするとケージの隅々まで必ず探索行動をすることが確認できています。

3)
同居解除直後、マウスを手のひらに乗せ、床から腰の位置くらいの高さを保ちながら、危険評価行動を観察しました。危険評価行動とは、のぞき込み行動で、規定時間内である高さから床をのぞき込んだ回数を数えます。同居解除直後のぽぽくんは、ほぼ危険評価行動をしませんでした。本来ならば被捕食側である小動物のマウスは危険評価行動をするはずですが、この時期のぽぽくんは、自発活動性が失われていたため、ほぼ危険評価行動をしなかったと推測されます。同居解除後1か月が経過したころには、規定時間内で危険評価行動を何回もするようになりました。

腸内を考える
腸内細菌叢のバランスが崩れていることを推測し、ヨーグルトなど食事による整腸を試みました。
<参考資料>
腸サイエンスの時代 うつ病の人の腸内細菌を調べたら… 調査から見えること
朝日新聞 Reライフ.net より

マウソックの深い悲しみ
4匹が同居していた時、ぽぽくんは、3匹から攻撃を受け、その攻撃は止まらない状況でした。

なぜ、このようなことになってしまったのか、社会的順位がそうさせていることは確かですが、執拗さは社会的順位だけで説明できるものなのか疑問に思い、検索をしたところ、興味深い2件の研究がありました。

静岡県立大学と他施設の共同研究は、社会的順位が性格や脳内の遺伝子発現に大きく影響することを明らかにしています。また筑波大学の研究プレゼン「攻撃行動の脳科学」の内容において、攻撃行動事態がマウスのセロトニン分泌に大きく関与しており、多すぎても少なすぎてもよくなく、適切な分泌量が脳内に必要であるとしています。

マウソックはこの2つの研究内容から、過剰な攻撃行動になるのは、攻撃行動を重ねることで脳内のセロトニン量が次第に変化し、さらなる攻撃行動が生まれ、結果、攻撃行動が目的のようになってしまったのではないのかと想像しました。

そのようになってしまったのはなぜなのか、やはり、マウス達は攻撃以外になにも見つけることができなかったということだと思います。できなかったというより、できる状況に4匹がいなかった、が正解だと思います。実際、ケージの中は、おもちゃはなく、4匹が一つの狭い部屋に同居している状況でした。

もし、もっと広々とした場所におもちゃが沢山ある環境でいつも楽しく遊べていたのなら、攻撃行動がおきたとしてもまた違う形の、これほど執拗な攻撃行動にならなかった可能性もあるのではないか。

ぽぽくんへの攻撃行動が確認された後、4匹は、それぞれ1匹ずつ生活するようにしました。この頃から、ととくんの活動量が減りました。その後、皮膚病を発症し、高価な薬をつけても悪化の一途をたどり、2020年1月4日、ととくんは苦しんで亡くなりました。ももくんは、体調があまり良くなくても元気なふりをしていました。体力が次第に尽きていくように悪化。そして、2019年9月11日、時無。体温は確実に限界を下回り、褪せるように消えていこうとするももくんの命を、マウソックは必死で守ろうとしていました。もう意味のない注射と遅すぎた加温で。

ぽぽくんを救うことができても、ととくん、ももくんを亡くしてしまった今、2匹の死は、飼っている者としての責任を大きく問いかけている、そう思えてならないのです。